――― 屋敷には大騒ぎになっていた。 桐里が帰ってこないことだ。 桐島様に連絡を入れるか入れまいかと、 困惑してわけがわからないようだった。 あの侍め。 俺の女に手を出したか…! 「違います、宗十郎様。 桐里お嬢様は大奥入りしたのでございます。 吉宗光に見初められたそうです」 「は…、」 「お話では、 桐里お嬢様が自害しようとしたところを 連れて行ったと」 俺は大きな過ちに気付いたのだ。 純愛の彼女に限って故意で 浮気など有り得ないのに、 酷いことを言ってしまったせいだ。