すると、大きな犬がわたしの方を振り返った。

目が合う。

穏やかだけど、爛々と光る目。


やっぱり違う。犬じゃない。

職業柄犬のことなら自信がある。


でも、こんな目をした犬には会ったことがなかった。


犬でないなら、オオカミ。

オオカミなら、大きさもあの目も納得できる。

でも、日本に野生のオオカミはいないはず。


オオカミかもしれないと気付いても、恐怖はなかった。


恐怖を感じたところで、腰が抜けていて動けなかったんだけど。