バカと利口は紙一重~実話込み~

 「せっ先生っ!!」と、試験監督の先生に助けを求めようとしたとき、



 「コラ木村! 静かにしなさい」


 私の前の席に座る死体がポカリと殴られた。



 「痛っ!!」


 むっくり起き上がる木村くん。

 しっ死んで……ない。


 「どうした? 暇なのか?」


 先生の問いに優は頭を掻くだけで何も言わない。

 生きてる……ちゃんと生きてるじゃん。

 じゃあ、さっきの白いのは何?


 「答えをしっかり確かめなさい」

 「はい、分かりました確かめます」


 ……って先生は私に言ってるんじゃない。

 反射的に言ってしまった私の方を先生はチラッと見た。

 恥ずかしくて私はうつむく。


 「もう終わりました」


 木村優の余裕たっぷりの声。


 「一回だけじゃなくて」

 「二回やりました」


 早っ!! 始まって、まだ二十分だよ?

 そして何だか遊んでるっぽい時間があったじゃんよ。


 「死んだふりしてる暇あったら三回四回とやるんだ! 嫌なら寝てろ」


 しっ死んだふりぃっ!?


 「はい」


 木村くんはおとなしく引き下がる。

 逆らわないってことは、死んだふりして遊んでたのか木村優!!



 定期テストの最中に?

 ありえな―――いっ!!

 バカと利口は紙一重!?



 前までの数学のテスト、全部百点だからナメてかかってるのっ!?




 おぅおぅおぅ、良い度胸じゃんか、ぇえっ!!


 私に喧嘩売ってんのっ?

 上等!!

 メラメラ吹き上がる怒りに任せ、私は猛烈に数学の問題を解きたくなった。