優の本心を知るオレとしては、彼女たちが気の毒に思える。

 だけどいいよね、何かに熱狂できるって羨ましいよ?

 そしてオレは思う。




 優の秘密を知っても、彼女たちはこのままファンを続けていられるのかどうか。




 半分はいなくなるっていうのがオレの予想。

 やっぱ廣子しかいねぇよ。

 廣子の心をどんだけつかめるかで、廣子が優の趣味を受け入れるか受け入れないかが決まっちまう。

こっからが正念場だ。

 優、ガンバレよ?



 ヴーヴーヴーヴーッ


 ポケットん中でケータイがバイブした。

 メールは優から。


 【あとで家行っていい?】

 【いいよ】


 そういうわけで、オレは家に帰るとゲームしながら優が来るのを待っていた。



 優が家に来たのはオレが帰宅してから二時間後。

 なにも、部活や生徒会じゃない。

 廣子を送ったあと、家に帰ってから来たんだ。


 「こんばんは。おばさん、この間ご馳走になったお礼です。召し上がってください」


 一見誠実な優の言葉。


 「そんな! いいのにぃ」

 「おばさんの料理より劣ると思いますけどね」

 「あら! お世辞がお上手ね。今日も食べてく?」

 「いいんですか?」


 マダムキラーな微笑みに、ま~たウッカリダマされてる母さん。

 迷惑かけても怒れない魔法をかけられたのに気づいてない。

 絶対コイツは営業向きだ。


 「優」


 呼び出さないといつまでも会話してそうだったから、オレは会話に割って入った。