廣子は恥ずかしそうに顔を染めながら、嬉しそうに微笑んでる。


 「これ一生飾っとこっ!!」


 流石は秀才、普通ここで味見をしなきゃならないが、うまく切り抜けた。

 オレは優に気づかれないようにトンッと廣子の背中を叩く。

 ビクッとなって廣子はオレの方を向いたけど、オレは何食わぬ顔で立ち上がる。

 こうすれば、立とうとしたオレの気配に廣子が反応したように見えるハズ。


 「トイレ行ってくるな」


 思ったより元気そうだし、邪魔者は消えてやるよ。

 あとはうまくやれ? フタリトモ。

 優の部屋を出たオレは成瀬さんを見つけ、一階のリビングで待たせて貰った。

 オレが成瀬さんと喋りながら廣子を待ってた時間は三十分。

 廣子の表情から察するに、その三十分はスゲェイイ感じだったんじゃねぇ?


 「何話してたんだ?」


 帰り道を歩きながらオレは廣子に訊いてみた。


 「いろいろ」

 「具体的には?」

 「いろいろ、だよ……」


 照れてうつむいた廣子。

 優、もう一押しだぞ!!

 廣子を家まで送ったら、自分の家についたのは八時を回ってた。

 飯食って風呂入って十時。

 その間にオレのケータイは優からのメールを受信してた。


 【今日はサンキュー。明日は学校行くから】


 現金なヤツだ。


 【仮病だったのか?】

 【違うよ!!】

 【ガンバレ】


 オレは意地悪なのかもしんない。

 廣子の好感度は上昇中だってこと、教えてやらなかった。

 優は秀才だからな、気づいてるかもしれないけど。