バカと利口は紙一重~実話込み~

 二十帖はあろうかというでっかい部屋の中。

 成瀬さんはベッドサイドに座椅子を二つ、並べてくれる。

 オレは優の頭よりの方の椅子を空けて座った。


 「うわ、恥ずかしいな。結城さん来てくれるなら、ちゃんとした格好しといたのに」


 優は上体を起こしながらチラリとオレを見た。


 風邪をひいた人特有の、弱々しい潤んだ瞳。

 優はいつも通りしてるつもりでいるんだろうが、その表情は怠そうだ。

 だけど、来るなら連絡しやがれ! と優の目は言っている。


 「寝てろよ。体調悪いんだろ?」

 「平気だよ」


 優、お前はダメなヤツだな~。



 「ダメだ。明日学校に出て来られなかったら恨むだろ!!」

 「恨まないよ」

 「いや、恨むね。お前はゼッテェ恨む。だから寝ろ。寝てた方がいいぞ~ぉ」


 いっつも気取ってる姿ばっか見せてたって、何のトクにもなんねーじゃん。



 違った一面見せてコソ、なんだよ!!



 優は怪訝そうな顔をしたけど、何か裏があると読んだのかどうなのか。

 何も言わずに身体を横たえた。


 「廣子、アレ、出せよ?」


 時間も時間だから、オレはちょっと急いでいた。

 あの分じゃあ廣子を一人で帰せねぇし。

 顔を赤くしながら、廣子はカバンをゴソゴソやった。


 「はい……」


 出てきたのはテディベアとハートマークが描かれた可愛い絵柄の袋。


 「え、何? つくってくれたの?」


 優の目が驚きと感激でキラキラと輝く。


 「うん」

 「マジっ!! スゴイ嬉しいよ!! 結城さんありがとうっ」


 廣子は恥ずかしそうに顔を染めながら、嬉しそうに微笑んでる。