バカと利口は紙一重~実話込み~

 いいわけねえじゃん。

 アイツがマジなんだから。

 何に対しても、いつもいつも受動的だった、アイツがマジなんだから。


 「廣子だから言うけどさ、オレ……優のこと好きなんだよな」

 「えっ」


 廣子がオレの方を見た。

 その視線があまりに純粋で真剣だったから、オレはスゲェドキドキして、目ぇ逸らしちまった。

 ヤッベ~、ウソなのにマジ緊張。


 「オレこんなだし、料理下手だし。優には女とも見られてねぇの知ってっけど……

 妬いた。廣子お前可愛いよ。女の子らしいっつうの? 優のタイプなんだよね」


 照れる……

 スゲェ恥ずい。

 穴があったら入りてぇっ!!


 「だから甘いもんキライっつーのウソ。ごめんな?」


 頭かきながら、必死で廣子の方向いて、オレは笑った。

 あ~顔から火が出る~っ。


 「千亜希ちゃん……」


 廣子は困ったような顔して、だけど頬をピンクに染めてちょっとうつむいた。

 ドキドキしてるこの心臓が、まるで廣子を見て高鳴ってるみたいで、オレはまた恥ずかしくなる。


 あ、あのおばちゃんがさっきから動いてねぇ。

 オレらの会話全部聞いてたら!!



 恥ず~っ。


 「早く出よ?」


 廣子の手を掴んで、オレは足早に店を出た。

 外はもう藍がさし、一等星がキラキラ輝いていた。


 「さっきの、絶対誰にも言うなよ?」

 「うん……」


 後処理も必要だよな。

 オレは二人のキューピットなんだから。


 「オレ、廣子だったらいいと思ってるから。優のこと任せられるっつぅの?」


 もう嫌だ~っ。


 「だから、もし優のこと好きになったりしたら、遠慮なく相談してな? 力になれると思う」

 「ありがとう」


 あがり過ぎて手に汗ダクダク。

 廣子の顔なんか見れたもんじゃなかったけど、声のトーンから廣子が嬉しそうに笑ってるの、分かった。

 だからオレはもう何も言わなかった。

 あまりにも恥ずいからオレは話題を早々に変え、優の家まで沈黙をつくらないように努力した。