バカと利口は紙一重~実話込み~

 キョロキョロ見回すオレ、の目に映るのは好奇の目でオレを見る歩行者たち。

 おい廣子っ!!

 どこ行った!!

 しかもいつからいないんだ!?

 思い起こすは三十分前の駅。

 さすらいのナンパ師二人組に捕まって、怯えてた廣子。

 ヤツらがいなくなっても震えてたじゃんか!!

 オレは来た道を小走りで戻りながら周りを注意して戻る。

 サラリーマンの姿もちょっと見えるし、高校生とか大学生とか、学校が終わって暇な時間だ。

 早く見つけねぇとヤバイ。

 ドコにいる廣子!!

 そのとき!! オレの目に飛び込んできた白看板。



 『スーパーTWENTY FOUR』



 思い出すは三分前の廣子。



 『フルーツとかなら平気かな?』



 絶対あっこだ~っ!!

 オレは店内に駆け込むと青果売り場へと急ぐ。

 廣子は夕張メロンの前に立っていた。


 「廣子っ!!」


 肩で息をしながら廣子の横に立つと、膝に手をついて呼吸を整える。


 「千亜希ちゃん」


 千亜希ちゃん、じゃね~よ!!

 どんだけ心配したと思ってんだタコ!!

 とか思うけど、そんなこと言えるワケがねぇ。


 「見舞いに来てくれるだけで嬉しいんだよ? 特に廣子がさぁ」


 廣子はメロンを見つめたまま、拳をギュッと握りしめて立っている。


 「メロン三千円だって。高いな~」

 「……」

 「そんなもん、買う必要ねぇよ」

 「……」

 「行こうぜ。あんまり遅くなると優ん家に悪い」


 細い手首を掴み、引っ張って外に出ようとしたら廣子は手を自分の方にグッと引き寄せて、オレの手の中から消えた。


 「廣子……」


 寝込んでる優に気ぃ遣わせるって、困ってたんだろ?

 気の利かない女だって思われるのが不安なんだろ?

 そんなこといいんだって。

 廣子を動かす方法、オレには見つからない。

 ただ一つの方法を除いては。




 だけど……オレが言っていいのか?