バカと利口は紙一重~実話込み~

 「歩けるか?」

 「うん」


 頼りなく頷く廣子の肩をにオレはそっと手を伸ばす。

 背中を押すようにして隣りを歩かせると、だんだん廣子の恐怖が薄れてくのが分かった。

 だけどお笑いだよな~。

 パンツ見えそうなミニスカートはいて着飾っても声かけらんない女もいるんだからさぁ。

 確かに、そういうのが五人で固まってたら声かけるのに度胸いるけどな。

 廣子の格好は清楚そのもの。

 膝丈の白いプリーツスカートに、薄ピンクのカーディガンとホワイトインナーのアンサンブル。

 胸前についた大きめリボンがブリッ子に見えないのは何もデザインのせいだけじゃねぇだろう。

 銀のミュールの中に小さく収まった白い足はディキュアなんか塗られてないんだから。

 いいんじゃない? 洒落すぎてなくて。

 だけどヤバイなぁ、未完成の美は。

 光り輝く源氏の君を思い起こしてアイツの変態魂に火がつきそうだ。


 「今、早乙女さんちが行ったから、その辺でちょっと時間潰そうぜ」


 オレは清楚なお嬢さんをデートに誘う。

 入ったのは仄暗い喫茶店。

 このビミョーな時間には高校生、大学生くらいしかいない。


 「アイスココアとアイスコーヒーお願いします」


 オレがボーイさんに頼むと、彼は爽やかな笑みを浮かべ、去って行った。

 なかなかナイスだけど、やっぱり優には勝てねぇよな~。


 「私お見舞いって、あんまり行ったことなくて……何を持って行けばいいのかなぁ?」

 「花とかお菓子が王道だけど……早乙女さんが大きな花束持ってたし、優甘いもん食わねぇよ?」

 「えぇっ!!」


 何故か驚いた廣子の顔。

 あまりにも反応がデカくて、声も大きかったから、店内の客の視線が集まった。


 「え~っと、廣子は見舞い、何を持ってくつもりだったんだ?」


 注目されてることに気づかないふりして訊いてみる。


 「マフィン……」


 お~っとぉ!! オレやっちゃったね~っ。

 ダメだとか、良くないとか、そういうネガティブなことは言っちゃダメだな。

 けど逆に好感度がバリバリアップする方法がある。