バカと利口は紙一重~実話込み~

 早乙女サンと久島サンと……and so on...

 何でやねん!! アンタら五時まで何しとったん!?

 という疑問は生まれもしなかった。

 だってスゲェもん。

 バサバサ風が立ちそうな目、ぷくっと艶やかな唇。

 チョココロネもビックリなタテ巻きロールと、八割以上出た太もも。



 クラクラするねぇ。

 こっから結構距離あるけど、香水匂ってきそうだよ!!

 廣子と時間どうやって潰そう……


 「さぁ、参りましょう」


 早乙女サン、ミュールのヒール高すぎじゃない?

 コツコツ歩く姿が、なんか前屈み。



 「やめてくださいっ!!」



 叫び声にハッと振り返ると、廣子が立ってた場所に男が二人。

 オレは慌てて走り出した。


 「廣子~!」


 オレからは見えねぇけど、名前呼ばれて廣子が反応したんだろう。

 男どもが振り返る。

 後ろから見ても前から見ても、やっぱりひょろっちい軟派な兄ちゃんだ。

 男装したオレが廣子に近づくにつれ、男どもは離れていく。

 ナンパ師はいざこざを嫌う。

 作戦はうまくいった。


 「怖かったよ……」


 ちょっとうつむく廣子の震える声。

 カバンを握りしめる手に白い手に力が入ってるのが見て取れる。


 「だよな。ゴメン。もっと早く来りゃ良かった」


 華奢な身体を抱き寄せたくなったけど、それはオレの仕事じゃねぇ。

 はたから見ればオレらはきっと彼氏彼女。

 けどオレはトラシャツ着て、男装してるだけの女だから。




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*トラシャツ:トランスシャツ。胸を潰すために使う