見るからに純情で清楚な廣子をこんな男の手にかけて汚したら、

 オレは一生十字架背負って生きてくことになりそうだ。


 「なんとかって言われても……」


 サーファーみてぇな外見で、「お願い助けてお兄ちゃん」的な目で見られても、演技としか思えねぇ。


 「できねぇなら諦めろ。いいな? 分かったか」

 「嫌だ」

 「じゃあオレ邪魔するよ?」

 「ダメ」


 どこのワガママ坊ちゃんだ。

 他人の前じゃあそんな子どもみてぇなこと言わねぇくせによぉ!

 だんだんイライラしてきた。


 「今回はさ……今までとちょっと違うんだ」


 優の顔から笑みが消える。


 「俺の趣味、全部理解した上でつき合ってくれる彼女が欲しい」

 「は―――――ぁっ!? お前マジで言ってる?」

 「マジだよ」


 オレを直視した優の目が、数学の問題を解いてるときみたいに、怖いくらい真剣だった。

思わずドキッとして、オレは目を逸らす。

 ダメだ。

 オレは優のこの目が苦手。

 なんか、全部見抜かれてるみてぇで緊張する。

 別にやましいことなんかねぇし、隠し事もねぇけど……怖いっつうの?

 優はマジ、頭キレるヤツだから、普段何考えてんのかとかも分かんねぇし。


 「何で廣子なわけ?」

 「タイプだから」


 ソッコーで返されたけど、あの考え深い優がそんな理由で自分の極めて稀な趣味を理解して欲しい女を選ぶか?

 何か怪しいな……マッマサカこの男っ!!

 ハッとして顔を上げたら、優はもういつもの爽やかな微笑みを浮かべてる。

 怪しい……ゼッテェ怪しい。


 「ダメ。ゼッテェ廣子は渡さねぇ」