バカと利口は紙一重~実話込み~

 いつもズボンの中にキッチリ入れてる白いYシャツの裾が、右側だけはみ出している。


 「優」

 「んっ?」

「シャツ出てる」

 「あ……」


 立ち止まり、すぐベルトに手をかけようとして、優はオレの方を向いた。


 「後ろ向いてろ」

 「なんだお前、恥ずかしい?」

 「あのねぇ、こういうときは女が気ぃ遣うんだよ?」

 「ヘイヘイ、悪ぅござんしたねぇ」


 腕を組み、後ろ向いてやると、カチャカチャ音がして、優がズボンを下ろす気配がした。




 「わざわざベルト外さないで裾を突っ込めばいいじゃん」


 とか言ったら優は


 「お前女だろ!!」


 と怒るかもしんないな。




 「よし終わった」

 「会長が玄関でストリップやったって全校放送で流したらどうなるかなぁ?」

 「千亜希、お前どうしようもないな……」


 優は呆れ顔でため息を吐いた。


 「悪かったな下品で」


 靴を履き替え、庇の下に出ると隣りに立つ優に手を差し出した。


 「傘返して」

 「……」

 「どうした? わざわざ返しに来てくれたんだろ?」

 「濡れてる」

 「知ってるよ」


 二人で相合い傘して帰っただろ~?

 あの狭っちい折りたたみで。


 「だから置いてきた」

 「そんなに気ぃ遣わなくていいのに」


 バッと傘が優の前で開く。

 右利きのはずなのに、優は左で傘の柄を持っている。


 「行くよ」

 「え? オレの傘は?」

 「ない」

 「なっないぃ?」


 優さん? あんた何のためにここまで来たのデスカ?