目覚めたとき、辺りは真っ暗だった。


 辺りに人の気配はない。

 蛍光灯が白すぎる光りを煌々と放ち、ワックスのはげかかった茶色の床をぬらぬらと照らしていた。

 空気が湿っているのを肌が感じてる。

 耳は風雨を捉えてる。

 雨、少しはおさまったかな?

 膝裏で弾くようにして引いた椅子の音が不気味に響く。

 パコン、パコンと柔らかいような固いような音を上履きとフローリングの間で鳴らしながら、オレは窓の前まで歩いた。

 教室の白く曇った窓ガラス。

 手でキュッキュッと拭いて見た外は暗く、中庭を照らす街灯が細くて長い雨糸の存在を知らせてくれた。

 いつんなったら上がるんだろう……

 あっという間に曇って外は見えなくなった。

 上がんなくても帰んなきゃまずいよな。

 外はもう、夜の支配下になっている。

 カバンを持って教室の電気を消すと、背後に迫る闇の気配を感じて、足がすくんだ。

 動いたら逃げるみたいで、逃げたら追いかけられる気がして、ちょっと怖かった。



 バカ野郎! 何も出ねぇよ!!



 ドスドスとフロアを踏みつけるみてぇに歩いて廊下に出る。

 廊下の突き当たりにある教室は真っ暗で、出入り口のドアについた窓ガラスから不気味な闇が覗いていた。



 情けねぇ!

 五年前、オレは男になったんじゃなかったのかよ!!



 階段まで行くのに真っ暗な教室二つとトイレの隣りを通らなくちゃならない。



 コエェ!! マジコエェ!!