「で? オレに何の用?」


 優等生な優くんが、わざわざ部活を休んでオレと帰る時間を合わせたには、それなりのワケがあるだろう。


 「俺さぁ、彼女欲しいんだ」

 「お前バカ?」


 オレへの当てつけか、この野郎!!

 爽やかに笑いやがって!!


 「お前なんかターゲットの目ぇ見てニコッと笑えばそれでカップル成立だよ」


 に比べてオレ。

 この性格だから彼氏の一人もいやしねぇ。

 っつ~か、全部、優のせいだ。

 コイツのせいで過去にいろいろあったからなぁ……

 そのうち責任取らせてやる!!

 と思ってるのに、どうしたら責任とって貰えるのかが分からない。

 悲しいサガだな。


 「そんなことないよ」


 こいつは心から、そう思ってんだろうな。

 去年の学園祭でミスターハイスクールに選ばれたくせに。

 成績優秀、スポーツ万能に加え、切れ長の涼しげな瞳、高い鼻、小麦色の肌に女殺しの甘い微笑み。

 笑顔一つで女心を掴み取る美男子のこの言葉、男盛りに彼女がいない男に聞かれたら殺される。


 「誰か狙ってるヤツいるの?」

 「分かる?」


 分かるってお前、デキスギくんが相談してくるんだからねぇ。


 「誰?」

 「結城さん」

 「ひっ廣子ぉっ!」


 とビックリしたものの、廣子はおっとり色白、二重まぶたの大きな目。

 ついつい守ってあげたくなっちゃうような女の子らしい女の子で、考えてみれば優のタイプにドンぴしゃだ。

 ビックリしたのはクラスでオレと仲いい友だちだったから。


 「お前なぁ、変なこと考えてねぇ?」

 「変なことって?」

 「趣味のこと言ってんの!」


 オレは知っている。

 コイツの知られざるヤバイ実態を。

 これをばらしたら、一瞬にして全ての好青年的イメージがガラガラと崩れ落ち、

 蔑まれ、キモイとか言われながら生きていくことになる、多分。


 「廣子はなぁ、オレの大事な友だちだよ? つき合う前になんとかしろよ!」