「あら! ごめんなさい。気を遣わせちゃったわね」

 「おばさんの料理美味しいから断らなかっただけです」


 ため息つきながらダイニングを出るオレの後ろで、多分マダムキラーな笑顔をつくってる優。

 あの~、オバサン口説いて楽しいデスカ!?

 そんなこんなでオレの部屋に優が入って来たのは夜九時。

 あのねぇ優くん、オレだって一応、女なんだよ??

 とか思ってたのは何年前だったかな。

 オレの前で優は男じゃねぇ代わりに、優の前でオレは女じゃねぇ。


 「結城さんと何話してたの?」


 優は単刀直入に訊いてきた。


 「ん~お前の秘密」

 「えぇっ!! なっなんてことを……」


 こいつには涼しい顔でいつもやられ放題だからな。

 今日はちょっとからかってやる。


 「いつかバラすんだろ? こういうのは後より先のが」

 「千亜希って……そういうヤツだったのか……」


 優の顔から表情が消える。

 愕然、そんな言葉がピッタリだった。

 何でそんな顔するんだろう。

 廣子に相当マジなのか?

 それとも、勝手に秘密をバラしたことに怒ってるだけ?


 「だっだけど、心配することなさそうだよ?」


 まだ優の顔は変わらない。


 「オレが言ったのは、紙のことだけだし」

 「紙?」

 「お前の主食」

 「主食じゃないっ!!」


 ムキになって言い返す優。

 オレはビックリして一瞬言葉を失った。


 「……ゴメン」


 こんな優は初めてだ。

 そんなにマズイことしたかな……

 得意科目は数学で勉強はいつも学年トップだし、スポーツは万能。

 顔だって悪くない、どころか……

 どこをとっても完璧な優。

 そいつの唯一のウィークポイント。

 それを、オレがバラすべきじゃなかった……のか。