ヤッヤギ……

 こいつ、何か変だ。

 紙を食うヤツをどう思うかって聞いたら、多分そんなヤツマジでいるのかって、訊いたりするだろ?

 ま、廣子はそういう人が存在すること知ってたみてぇだけど……

 それはおいといて、食ったことがあるらしい、紙を。

 ローションの染みこんだ、ティッシュペーパーを。

 花粉の時期にはとってもお鼻に優しい、だけど財布に痛い貴重な一枚を、食ったらしい。

 間違ってる!!

 間違ってるよ!!

 もういいよ! オレ邪魔しねぇよ。

 流石だよ優。

 よく見抜いた。

 純粋清楚な男子の憧れ結城廣子がティッシュを食うサイドの人間だったなんて!


 誰が想像できようか――――――

 廣子なら受け入れてくれるさ、お前の女装趣味もなっ!!

 廣子が帰ってからの脱力感といったらない。

 もう、何だか全てがどうでも良くなった。

 ただ大事な友だちを守りたかっただけで、何かを賭けてたわけじゃない。

 優の恋路を邪魔するのを人生の楽しみにしてたワケでもない。

 だけど……なんかオレ、十七年と数ヶ月生きてきて、何やってたんだ?

 常識が全部ひっくり返された感じ。

 オレにとってはスゲー非常識なことって、他のヤツにとっちゃあ普通だったりするのかなぁ。

 机の引き出しから出した一枚の写真。

 メイド服着た木村優が上目遣いに口半開き。

 小首を傾げ、手を胸元に組んで立っている。

 しかも化粧バッチリ、お目々パッチリ。

 どう見てもやる気満々の写真だ。

 何かあったときの切り札にと思ってとっといたけど……使えねぇ?