「疲れた~。」


休憩で入ったカフェで、都がばったりと体をテーブルに伏せる。
朝から歩き続けた足はもうパンパンだ。


「ゆり、めずらしく元気だね~。いつもだったらゆりの方が先にへばるのに。」

「そ、そかな~。」


都の言葉に素知らぬ顔していたけど、その通りだった。
自分でもびっくりだけど、不思議と今日は疲れを感じなかった。


理由は―――


「……あ、矢島湊!」


思いがけず心の中にいたその人の名前を呼ばれ
わたしは思わずコーヒーカップを落としそうになる。


「なっなんで?!」

「なんで??って、ほらあそこ。」


都が指さすその先には、ビル一面の矢島湊。
スマートフォンのポスターだろうか。
まっすぐ見つめる彼の目は、わたしをとらえて逃さない。