「矢島さんはお母さんが大好きなんですね。」

「なっ…!」


わたしの言葉に彼はどんどん赤くなっていく。
顔を見られないようにか、パッと下向いてしまった。


「いっ、今はそんな風には思ってないですよ!
相変わらず自分優先な母ですけど。
ってか、こんなこと思い出したのも久しぶりで、
あんな風に小島さんに当たってしまったのも自分で不思議なくらいで。」


どんどん早口になっていく彼に思わず笑みがこぼれた。
わざわざ話に来てくれた彼の優しさに、少し胸があったかくなる。


「そんなプライベートなこと話してもらってありがとうございます。
きっと…わたしの話で気を遣わせちゃいましたね。」

「いや、……ちゃんとお話しできてよかったです。
あのまま帰ってたら、きっとすごい自己嫌悪だったんで。」


苦笑いしながら彼が答え、そして「大変だったんですね。」と
わたしに聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声でつぶやいた。


その声の大きさが、彼がわたしの過去に踏み込んでいいのか
彼なりに悩んでくれている気がして少しうれしかった。