「本当にすみませんでした。」


またまた彼が頭をさげる。


「いやいや、本当に気にしないでください。
何も知らなかったんですから仕方ないですよ。
おしゃってることもいろいろ考え方はあるでしょうけど、
子供が母親大好きなのはその通りですしね。」

「いや、そうじゃなくて……。」


頭を抱えながら、何やら考え込んでる。


「あれは、その、ただの八つ当たりというか、なんというか…。」


言葉の意味がよくわからず、わたしは首をかしげた。
そんなわたしを見て、彼は『はぁー』と大きく息をはき話し始めた。


「俺、、、の母親が、その…子供よりずっと自分優先だった人で、
子供の頃よく一人で留守番してたんです。」

「あー……。」


彼の不機嫌の理由がやっと理解できた気がしてわたしは小さく頷いた。


「父親も忙しい人で…今思えば仕事も家の事も母は一人で頑張ってたんだって思うんです。でも……。」

「そうだったんですね…。」

「小島さんが楽しそうにしてるのを見て、何だか母と重なってしまって
…母もこんな風に楽しんでいたんじゃないかって思ってしまって、、
小島さんは何にも関係ないのに……
その、思いっきり八つ当たりでした。すみません…。」


申し訳なさそうに小さくなっている彼を見て、わたしは思わず吹き出してしまった。