「顔洗ってこよう」 声に出してから立ち上がる。 確か水道場はトイレの少し奥にあったはず。 場所を思い出しながら歩く。 夏の日差しは暑い。やっぱり顔を洗いに来 て正解だったかも。 水道場につき、蛇口を捻りながら顔をバシ ャバシャと洗う。 冷たくて気持ちいい。 でも、さっきの苦しくて甘い感情は消えない。 …戻ろう。多分このままでも消えてくれない。 私は今来た道を引き返しはじめた。 「あ!伊織じゃ~ん!久しぶりっ」 「…あぁ」