解斗は混乱と安堵で頭が回らなかった。


大魔王?討伐命令?


いくら考えようとしても回らない頭に苛立ち、屋上で考えようと廊下へ出た。


案内板を見て経路を確認した後、数回迷いながらも屋上へのドアを見つけた。


重く錆びた鉄製のドアは、あまり人が使っていない事を表していた。


汚れてたらやだな……と、少々わがままな事を考えながら、ドアを開けた。


まってましたと言わんばかりに風が解斗の顔に吹き付ける。


涼しく、考え事をするなら良い環境。思ったほど汚れてもいない。


が、解斗の思考は停止した。


鎌が柵を乗り越えた端に立っていた。


「鎌君!そんなところにいたら危ないよ!!」


鎌のいる場所まで走りながら注意する。


鎌はゆっくり振り返って、冷たい無表情で言った。


「さ よ な ら」


無表情のまま、後ろ向きに倒れていく。


柵まで後少し。


解斗は自分でも信じられない程の速さで走った。


そしてそのままの勢いで柵を乗り越え、落ち始めた鎌の腕を右腕で掴んだ。


鎌の体はぶらりと揺れる。


鎌は顔をゆっくり上げ、解斗の顔を捉えた。


無表情で閉じられた口が、裂けるように不気味な笑みを作り上げていく。


三日月型のような笑み。


解斗の背中に冷たいものが走る。


「死にたいんだ……」


鎌の大鎌が解斗の首にあてられる。


解斗はビクッと体を震わせたが、キッと鎌を見据えた。


「いいよ。鎌君が助かるなら僕は喜んで死ぬ」


その言葉に呆れたように、鎌は溜め息をついた。


「また、それ……」


鎌は解斗の首から大鎌を離し、かわりに鎌の腕を掴んでいる解斗の右肩を切断した。


「いっ!!!」


痛みに顔を歪ませたが、また落ち始めた鎌を何とか掴もうと左手を伸ばす。


が、届かない。


「さよなら。殺人犯」


鎌は笑って言った。