「そう落ち込まないでよ。すぐ楽になるから」


「えっ…?」


涙を拭って、解斗は鎌を見る。


優しげに笑う目は、どこか虚ろだった。


鎌の手に大鎌が出現し、それを振りかぶる。


無表情になった鎌の虚ろな瞳が解斗を捉える。


「れ、鎌君?何してるの?」


ガクガクと震えながらすがるような目で鎌を見るも、鎌はそれを受け付けない。


「死ね」


鎌が短く、冷たく言い放った言葉にはおぞましい程の殺気が込められていた。


もうだめだ…死ぬのかな……


解斗はどこかでそう思い、観念したように目を閉じた。


鎌が大鎌を振った風の音がする。


さよなら、僕の人生。


走馬灯が巡る中、どこか安心した顔で思った。



ガキッ!!!


金属と金属がぶつかったような音。


何の痛みも感じない。


解斗の顔に風がふわりとかかる。


ゆっくり目を開けていくと、振り降ろした大鎌を短剣一つで受け止める、右目の辺りに黒い仮面を付けた人物がいた。背は高く、成人程の身長。


鎌は忌々しげに舌打ちする。


黒い仮面の人物が淡々と言葉を発する。


「神崎鎌。まだこいつの討伐命令は出ていないはずだ。我の命令に反する事は禁じられている」


鎌はもう一度舌打ちし、大鎌を消して黒い仮面の人物を睨み付ける。


「分かったよ、鎧。いや、大魔王」


鎌は踵を返し、ドアを開けて廊下へ出ていった。


黒い仮面の人物も解斗の顔を一瞥してから黒い霧に包まれるように消えた。