魂狩り

不意に遊ぶ手を止め、満月を見上げた。


目を細め、手をかざす。


まるで月の光が眩しいかのように。


かざした手を下ろし、今度は羽を見た。


目は細めたまま、口の端が吊り上がった笑みを浮かべる。


羽を人差し指と親指でつまみ、腕を真っ直ぐ伸ばす。


そして、つまんだ指を離した。


羽はひらひらと舞いながら地面に落ちていく。


その様子を鎌はじっと見つめた。


やがて、羽が地面に落ちると、羽は溶けるように消えていった。


鎌はそこまで見届けると、体を戻し、右手を左から右へスライドさせた。


すると手の動きに合わせるようにモニターが出現した。


モニターには、工事現場が映っている。


解斗と雷十の通学路の途中にある。


工事現場の前を男子二人が通った、その瞬間。


ガッシャアァァァンッ!!!


大きな音を立て、鉄柱が落ちてきた。


鉄柱は男子一人に降り注ぎ、突き刺さった。


もう一人は無傷で、鉄柱が突き刺さった男子に駆け寄った。


鎌は映像を見ながら足をゆらゆらと揺らす。


そして、笑いながら呟き始めた。


「明日」


映像に、僅かにノイズが混じる。


「君は」


ザザッ……とノイズが目立ってきた。


「どう頑張っちゃっても」


ザザザザザッ!


映像がノイズで見えにくい。


「……死にますよ」


ザーーーー……


映像がノイズで満たされた。


「あれ? 自動で『書き換え』しちゃった?」


鎌は口に手を当て、驚く仕草をした。


「まぁいっか。
……どうせまた書き換えるし」


鎌はそう呟くと、屋上から飛び降りた。


地面に普通に着地すると、スタスタと歩いた。


そのまま何事も無かったかのように学校を立ち去った。