中庭。
解斗と鎌はベンチに腰掛け、パンを食べていた。
「そう言えば、財布が無くなったって言ってたよね?」
「うん……誰か僕の鞄に近付いたの、見てないかな?」
「うーん……」
鎌は考え込むような動作をする。
「あ、そういや……」
「何?誰か心当たりあるの?」
「うん。雷十が近付いてた気がするよ」
「……え?」
解斗は目を見開く。
「雷十が…?」
「あくまで『気がする』だからね。気に止める事無いよ」
だから元気出して?と笑う鎌を、解斗は完全に信じきっていた。
「ごちっ!じゃ、ボク先に行ってるね♪」
「うん。また後で」
じゃーね!と手を振り、解斗に背を向けた瞬間、鎌は先程の笑顔とは程遠い不気味な笑みを浮かべた。
「そんなに雷十が大切なら、消してあげるよ」
口だけで笑いながら、鎌は校舎の中に消えた。


