「そんな、嘘だ……」


残る希望は鎌のみ。


解斗は泣き出しそうなのをこらえて、鎌に近付いた。


「鎌君……」


「なーに?」


いつもの無邪気な笑顔で答える鎌に、少しゾッとする。


「矢野和哉って、知ってる…?」


お願いだから、知っていると言って!


解斗の思いは、届かなかった。


「誰それ?ボク知らないよ?」


「嘘……でしょ?」


解斗はその場に座り込んだ。


視線が集中する。


解斗はそれにも気付かず、俯いてすすり泣いていた。


鎌の席の隣で泣く解斗を、鎌は誰にも気付かれないように見下した。


あははっ。そうだよ、もっと泣け。泣いて泣いて泣いて、無様な姿をボクに見せて。


誰も伺えない、ほくそ笑む裏の顔。


解斗を気の毒そうに見る、表の顔。


正反対の、彼の顔。


誰も知らない。誰も伺えない。


見たところで待つのは死。