握られた手は暖かくて、冷たい鎌の心を溶かすようだった。


鎌はまた睨むが、解斗はニコリと笑って気付いていないようす。


「手…離してくれないかな」


冷たく鎌は言い放つ。


「あっ…ごめん。嫌だった?」


解斗が慌てて手を離す。

「誰もそんなこと言ってないけど」


そうは言っているものの、本当はすごく嫌だった。


「良かった。あっ、もうこんな時間。早く帰らなきゃ……」


解斗は時計を見て少し哀しげな表情を浮かべた。


「それじゃあね!また今度、中学校で会えたら!」


そう言って走り去っていく解斗の背中を、鎌はただただ見つめていた。


「…………偽善者が」


ポツリと呟いた鎌の言葉からは、感情を読み取るには十分過ぎる怒りがこもっていた。