【月光視点】


結局、放課後になっても新矢は現れなかった。


それでも無人の教室で待ち続けていると、先生が見回りにきた。


「ん?神月君、まだ帰らないのか?」


「はい。友人がまだ戻ってないので」


「そうか。早く戻ってくればいいな」


先生が通り過ぎて行った。


しょうがない。一人で帰るか……


鞄を持ち、教室を出て、廊下を歩く。


「…………イ……」


何か聞こえた。空耳か?


「…………イ……!」


確かに聞こえた。空耳ではない。


「オイ!」


新矢が息を切らして追いかけて来ていた。ちゃっかり鞄は持っている。


「テメェ…なァ…何…気にしてんだよ……」


新矢が息継ぎしながら話す。


「んなの…気にしてねェっつの」


真剣な目で見る新矢に、俺はフッと笑顔を見せた。


俺の笑顔を見て新矢が驚いた表情をする。


「お前……そんな顔出来んのかよ」


「出来たら悪いか」


「悪い訳ではねェけどよ……」


「どうせ意外だとか思ってんだろ」


新矢が「気付かれてたか」と笑う。


俺も笑った。