「あぁ、悪い」
椅子から立ち上がると、屋上へ向かった。
屋上には数人の生徒がいたが、新矢を見るなりそそくさと去っていった。
……どれだけの不良なんだこいつは。
「んじゃ、色々とあるから好きなの食え」
ビニール袋から取り出したのは、パンだった。
俺はサンドイッチを選び、楔は菓子パン、新矢は焼きそばパンを選んだ。
「あ、新矢一人だけコーヒー買うとかずるくないか?」
「うるせーな。だったら自分で買ってこいっての」
新矢がビニール袋からコーヒー缶を取り出したのを見て、楔が咎める。
俺もコーヒーは好きだが、そこまででもない。
「ま、新矢が飲むのっていつもブラックだからどっちみちいらないけど」
「じゃあ言うなっての」
微笑ましい光景だが……これだと俺が完全に部外者になってないか?
小さく溜め息を吐きつつ、サンドイッチを口に運ぶ。
……そういや鎧もコーヒーは好きだったな。こうやって飲んでると……。
「この辺でコーヒーの匂いがっ!」
……ほら出た。
「出やがったな神崎鎧!俺のコーヒーは渡さんっ!」
「なら力ずくにでも!」
「やめろお前ら。大人げない」
見てて呆れるような喧嘩を俺が止める。
っつーか、鎧とかナイフ出してるし。本当に大人気ない……。
楔は知らん顔で菓子パンを食べている。
まるで興味が無いようだ。
「新矢はそんなことでムキになるな。
鎧はその辺の自動販売機でも買えるだろ」
冷静に的確に言葉を繋げる。


