ビターオレンジ。





言われる筈なんてないのに。

だってこんなにも若い人だ。




友達だって私と違って沢山いるだろうし、

遊んだり、仕事したり…きっとそんな毎日が楽しいはずだ。






私なんか引き取っても何もいい事はない。







まぁ、元々そんな事言うはずないけどね。


すると咲さんは私を見てにっこりと微笑んだ。





「東京でね?2人で暮らしたいなって思ってて。どうかな?」






今度は確かにそう言った。

そして…




「…っ…」




初めて。

…両親に捨てられたあの時から泣かなかったのに。


何故だか我慢出来なかった。






ポロポロと溢れて頬を濡らす涙を私は止める術なんて知らなくて、

それがもっと止まらなくなったのは…






「ふふっ…」

ギュッと優しく抱きしめてくれた咲さんのせい。






お母さんにも…こうして欲しかった。

おもちゃなんていらないから。

お金がなくてもいい。


家事だってなんでもする。





だから…一度は抱きしめてほしかった。





産まれてきてくれてありがとうって。










言ってほしかったんだ。




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