ガチャ…
そんなやり取りをしている時だった。
リビングのドアを開く音。
そして、そこに立っていたのは。
「久しぶりだね、也佳。」
「…っと…斗間君?」
「誰…?」
本宮君の不思議そうな声はかろうじてしか聞こえなかった。
だからかな、私にはわかった。
もう…既に遅かったんだと。
「…咲さんの結婚相手。」
甘く高鳴る鼓動が五月蝿くて。
キューっとする痛みの正体なんてわかりたくなくて。
懐かしさにまたドキドキしてる自分がそこには確かにいた。
黒髪に少し焦げ茶の混ざった癖っ毛。
吸い込まれそうな程、澄んでいる目。
顎の下の黒子。
綺麗に整った顔も…意地悪で、でもどこか優しい声も。
変わってなんていなかった。
つくづく私は馬鹿だなって思い知ったよ。
咲さんの婚約者。
そんな事わかってるのにな。
初めて会った時からずっと後悔してた。
あの頃はまだそうだと認めたくなくて、
自分の気の迷いだと信じていたのに。
今日で確信に変わってしまったんだ。
私は、斗間君が好きなんだと。
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