「じゃあ、本宮君はあるの?」
返されたマグカップに口を付けられずにいながら、そう聞く。
「あるよ。何度もね」
何度も。
きっとそうでもおかしくないと思ってた。
だって、運動神経抜群で…頭も良くて、性格も顔も恰好いいもん。
別に好きって訳じゃない。
だけどふわふわの黒い髪。
透き通った目。
キュッとした可愛い口。
そして、
「嘘だけどね。」
ちょっと意地悪な性格。
それは男女共に人気者な訳で。
私も友達として大好きだ。
だから、何で私なんかと居るんだろうっていつも不思議に思ってた。
「…って、嘘なのっ!?」
「反応遅くない?…好きな子と1回したくらい。でも小さい頃だから本人は全く覚えてないけどね。」
好きな子。
きっと理由はこの言葉を聞いたから。
その子は羨ましいなと思った。
こんなにいい人に好かれて。
わからないモヤモヤとした気持ち…それはヤキモチと言うのかな?
でも、きっとそれとは少し違う。
「…へぇ〜」
ずっと一緒にいた誰かが急に居なくなってしまったような…寂しさ?
それとも違う。
私にはまだこの気持ちが何かわからなかった。
本当はわかろうとしなかっただけなのかも知れないけど。
「妬いた?」
「妬いてない。」
「あ、そう。」
「…うん。」
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