「た…ただいま!!」
学校が終わると明かりのついた家に帰る。
それにちゃんと…
「お帰り、也佳ちゃん。」
返ってくるそんな声。
「あのね、今日ね…友達が家に来るんだけど…」
初めての友達。
そして友達を家に呼ぶのも初めて。
そんな初めてだらけでウズウズしながらやっと言い出せたのはここまで。
「咲さんのケーキ食べてみたいって…言ってて、あの…」
「うん。わかった。張り切って作るね!」
胸の前でぐっと拳を握った咲さん。
「うん…ありがとう」
それから暫くすると…
ピンポーンという音と共に緊張しだした体。
ガチャッ…とドアを開けて咲さんに紹介する。
「えっと、本宮君です。クラスが同じで、後から佐藤海ちゃんも来ます。」
「…彼氏?」
ニヤニヤと本宮君を見ながらそう言った咲さん。
「違うよ!…友達だよ。ね?…ね?」
「就職して結婚できる歳になったら、タキシードで挨拶しに伺いますね。」
必死に否定する私をからかって本宮君は、
そんな恥ずかしい事をさらりと真面目な顔をして言った。
きっと今、とてつもなく顔が赤い。
だって物凄く暑いんだもん。
それに咲さんはよろしくね。なんて言って私の部屋へ本宮君を案内する。
部屋の中に入るとそそくさと、
「お邪魔虫はケーキを作りに行きますので。」
そう言って出ていった。
「お前の母さん面白いな。」
私は自信を持ってこの答えに…
「でしょ?」
そう答えることができる。
だってもう咲さんは、
私の自慢のお母さんだから。

