届かなかったボールが拓実くんに向かって転がる。

それを拾う拓実くん。

その仕草がなぜか切なくて胸のあたりがちくっと痛くなる。


「優宇ね、運動音痴なんだよ!拓実くんコツ教えてあげてよ〜!」


あ、あこ〜!
それは、、、



「いーよ!優宇ちゃんこっちきて」


ちくちくもドキドキも全部が一緒になって
鼓動ははやく、みんなに聞こえそうな音で動いてく。


少し駆け足で拓実くんのところへ行くと
さらにはやい音で動きだす。

「ボールをこう投げて」

拓実くんが私の後ろにまわる。

腕を掴んで一緒に投げる。



「カップルみてぇ(笑)」

け、け、け、圭悟!!!!

心の中で赤面していたつもりが

「優宇ったら、顔真っ赤じゃん!まんざらでもないな〜!」


顔まで赤かったらしい。


「そ、そんな訳ないじゃんっ‼︎圭悟もあこもやめてよ〜!!
ねえ!拓実くん!」

話を振ってしまった。

どうしよう、

「そうだよ。あこちゃんが優宇ちゃんに教えてって言ったんでしょ〜!」

「はいはーい、圭悟寒い!圭悟あそこの自販までダッシュだ!!」


あこは近くの自動販売機を指さして、圭悟にあったかいものを頼んだ。

「優宇ちゃんは?コーヒー飲める?」

本当は砂糖いっぱいのもはやカフェ・オ・レじゃないと飲めない。

でもここで飲めないと言ったら10円高いミルクティーになる。

あこと私もおごってもらうわけだから
わがままは言えない。


「飲めるよ!ありがとう。」

「そんじゃ、朝陽と拓実荷物もちね!」

「んー。」

朝陽くんは無口な人で表情を携帯に向けながら軽く返事をした。

「まじかよ!1人で行けよ!」

拓実くんは文句を笑いながら言ったものの、しっかり圭悟について行った。


私とあこは近くのベンチに向かった。


「ねえ、拓実くんのこと一目惚れでもした?」

あこが急にそんなことを聞くなんて。

そんなに私はおかしかっただろうか。

「分からないの。でも最初見たときからずっと拓実くんにドキドキしてるの。


よく考えたら別れたばかりなのにね。


私切り替えはやい人じゃない?


誰のことが好きなんだろう。」



「うちは別にそんなのどうだっていいと思うよ。

運命かもじゃん。


神様がさ、昨日晴人くんと別れさせて、今日拓実くんと出会わせた。

もし昨日別れてなかったら、

拓実くんへの気持ちは気づかないふりをしなくちゃいけない。

でも、別れた後だから、フリーだから

堂々と好きでいてもいいんじゃない?」