恋の音〜本当の恋まで〜



「優宇顔洗いに行こう。ね?」

「うん、行く…」


階段の前の手洗い場で顔を洗ってみたけれど
涙は止まることをしなくって泣いてしまう。


他のクラスの人や

他の人の目なんか気にしない。


気にできない。


頭に浮かぶのは芹沢くんの冷たい態度。


私じゃだめなんだ。


あのときの優しさは本当に隣だったからだけ。


それ以上の以下の気持ちもない。



そんなことわかってたよ。

わかってたけど、チャイムと同時に恋に落ちた私には

少しの可能性でも信じたかったの。



涙は止まらない。


あこが背中を撫でてくれる。



「優宇?」


どこかで聞いたことのある男子の声。

この声は…




後ろを向くとちょうど移動教室だったのか
教科書を持った晴人がいる。



「優宇?どうした?」


「ちょっとあことけんかしたんだよね?」

見え見えの嘘。

だってあこは優しく私の肩を撫でてくれていたのだから。


「そうそうっ!ちょっと優宇に言い過ぎちゃった」

あこ。こんな見え見えの嘘に付き合ってくれてありがとう。

晴人…ごめんね。



もう少し私に嘘をつかせて。