どんなに日が経っても中谷のことは一日も忘れたことはない。
でも…、あの頃毎日隣で眠っていた無邪気な寝顔もふっと笑う微かな笑顔も全部もう見れないんだと思うと胸が締め付けられたみたいに苦しくて私はあまり笑わなくなった。

笑うのが嫌なんじゃない。笑うと苦しくなる。
笑って笑ってそれが当たり前になって本当の私を見失って、いつの間にか中谷の存在も私の中で薄れていくのが怖くて仕方なかった。
春が来る度に思い出すあの日の中谷。
冬が来る度に思い出すあの夜の中谷の声。
何度も電話したけど機械的な声が聞こえてきて一度も繋がったことはなかった。