その日出した熱は、えらくくすぶった状態で2日ほど私について回った。

 いつもの通り寝ているしかない状態で、たまにご飯の後なんかの調子のいい時にはアクセサリーを作ったりして細かい仕事をしていたけれど、ほとんど不機嫌にはならなかったのは、あの人のお陰だと思う。

 細身だけれど大きくて、茶色の髪は肩までのびていて、目立つ綺麗なブルーの輪を3つも片耳につけている、龍さん。

 あの人の、大きな笑い声や走っていく体の線が綺麗なのや、企んで細める瞳を私はよく記憶していたらしい。

 ちょっとブルーな気分になって寝ている時、それを思い出すとくすりと笑えた。それから気分を取り直して、やらなければならないことに取り掛かれたのだから。


「断舎利は、一応終了したよね」

 熱も下がってちゃんと日中起きられるようになったある日の午後、私は自分の部屋で腰に手をあてて立っていた。

 壁に貼っていた紙は2つ目のRに書きなおしてみたのだ。

 reuse=再利用。


 白い紙に書いたそれを、私は部屋の真ん中からじいーっと見詰めた。・・・再利用?ううーん、それってどうしたらいいんだろう。何の利用かな・・・。別の、use・・・使いなおす?ううーん。

 例えばこれが環境テーマであるならば、こういうことだろう。いらなくなったものを別の利用法がないかを考えて使う、とか、そういうの。勉強机を破棄する前に、上の部分をとってパソコンデスクにする、とか。つまり・・・私の要らないもの、といえば。

「・・・時間、かしら」