私はまだ驚いて目を見開いたままの状態で、ついしげしげと眺める。
・・・痛そうだわ、この人。そう思ってたら、つい、それがそのまま言葉で出てしまった。
「痛そう・・・」
「は?」
彼が怪訝な顔をする。盛り上がって変形した片目と眉間を寄せて見上げられて、その迫力に一瞬怯えた。きゃあ~・・・は、迫力が・・・。
私は焦ってうまく回らない舌で、懸命に言葉を押し出す。
「ええと、あの・・・その、怪我が・・・」
「え?――――――ああ、これ。これは、まあ痛いけど。それより、そっちは大丈夫ですか?俺がぶつかって変なことになってない?」
彼がヒョイと立ち上がった。うわあ~・・・私はまた驚いて、身を固める。
だって、高かったのだ。彼は車椅子に座る私を遥か上から見下ろして、顔の怪我を片手で覆っていた。どうやらその怪我で私が怯えていると思ったらしかった。
濡れたように首筋にはりつく茶色の髪は長めで、その髪の間からはキラリと青く光るアクセサリーが。黒いTシャツはかなり汚れていて、それは血や何か他の液体のようだった。彼の体からは、微かに汗や調味料の匂いもした。
大きくて、肩幅も広くて、なんともいい体つきをしていた。
・・・・きゃあああ~・・・こ、この人って、何だかもしかして不良さんって呼ばれる人なのかしら・・・。
少なくとも今まで私の周りにはいなかった外見をした人間だった。よくは知らないけど、ロック?系とか・・・そんな感じのイメージの人だわ。



