「・・・わあ、さすが点滴」

 もう既に熱が下がり始めているのだろう。毎度のことながら、感心する。乾いた唇でそう呟く。血液に直接薬をいれること、それって絶大なる威力なんだわ―――――――――

 ガシャン!

「うわ!」

「きゃあ!?」

 急に揺れ動いた車椅子の上で驚いて、私はつい叫び声を上げる。パッと顔を上げると、そこには車椅子の横にしゃがみ込む一人の男性がいた。

「い、いてぇ・・・」

 足首を押さえてうずくまっているらしい。どうやら、込み合った廊下を進もうとして衝立の足に引っかかったらしかった。で、そのままその中にいる私に倒れこんできた、そういう場面らしい。

 驚いた拍子に私の頭の下から落ちたタオルを大きな手で拾って、その男の人が顔を上げた。

「!」

 私は思わず仰け反る。高熱で潤んだ瞳でも、ハッキリと判るくらいに盛り上がったこめかみ近くの瘤。それから、目の周りの青い皮膚。これはアザだろう、それから片目も塞がって――――――――

「・・・すみません、ぶつかってしまって。・・・えーと、大丈夫でしたか?」

 男の人が、そう言った。