いつか。

 いつか、このお金は誰かの為に使いたい。

 返すことも断ることも出来なかったこのお金は違う誰かを助けるためにって。ずっとそう思って、それが叶えられない悔しさに唇をかみ締めながら切り取っていくのだ。

 早く、ちゃんと自力で生活をしたい。

 それを強く思いながら、思い通りにならない細い体を持て余していた。



 正月を終えて姉との家に戻った夜、私は紙に大きく文字を書いて自分の部屋へ貼った。

「reduce=減らす」

 これで、良し。出来るかどうかはおいておいて、少なくとも文字は綺麗に書けてるわ、そう思って満足に壁に貼った紙を眺めた。

「・・・まず、一つめ」

 1つ目のRだ。減らす。この言葉を私の人生に置き換えて、何がどう動くか考えなきゃ。

 壁に張られた白い紙に太いマジックで書いたその英単語を、私は目が痛くなるまで見詰めていた。・・・減らす。減らす、減らす。

 何を?

 ・・・過去、そして、記憶とそれに付随する物たちを。