私も彼を見上げて大きく笑う。私も、幸せです。心の中で、たった今偶然すれ違った元夫にそう話しかける。

 ・・・私も、今、すごく幸せです。

 お互いに、大事にしましょう。この新しい縁を。そう呟いた。


 風に髪を流しながら、龍さんが手で日光を遮って言った。

「ジュンコさん、俺腹減っちゃった~。何か食べようぜ」

 私はそうね、と返事をする。時計を見ればまだ11時をやっとすぎたところだけど。お腹が空いたなら、それを満たしに歩けるのだから。

 私達は、二人で。

 声に希望を込めて、笑顔には精一杯の感謝を込めて、私は彼の腕を引っ張って先へと促した。


「二人で――――――――美味しいものを、食べにいきましょう」


 見上げた空には秋のうろこ雲。

 高い高い場所でいくつもの模様を作っては風に千切れて流されていく。


 私は彼の手を握ってそれを見上げる。


 あの端っこの方のは・・・龍さんの、ピアスみたいだ、そう思って微笑んだ――――――――――




「3つのR」終わり。