「あ、はい」
私は大きな返事をして、焦って通りを渡りに小走りになって近づいていく。
その時、風が吹いて、髪が視界を覆った。驚いて顔を振る。目にかかった髪を手で退けて横を向いた。
視界の隅に、信号待ちのトラックが目に入ったのは、本当に偶然だった。
だけどその一瞬、私の目はそのトラックから離れなくなった。
軽トラックの荷台に積んであるのは灯油やビール瓶の詰まった籠。樽、それに様々な細かいもの達。トラックの車体には、平林酒店と文字が見えた。
―――――――――あ。
私は歩きをやめなかった。だけど、目はそのトラックから離せずに、そのまま視線を荷台からずらして運転席へと向ける。
そこには明るい笑顔で何かを話しているらしい若い女性の姿。灰色のフードつきパーカーを着ていて、腕をまくってハンドルを握っている。
知らない女の人だった。
だけど、このトラックを私は知っている。
「ジュンコさん、早く!」
歩道の向こう側で龍さんが私を見て叫ぶ。私は、はい、とまた返事をしながら横断歩道を渡りきって―――――――改めて、トラックの運転席へ目を向けた。
トラックの助手席にうつる人影。ハンドルを握る女性よりもかなり高い背らしい男性。その男性の、見開かれた目と私の目がばっちりあった。



