「ええ、勿論。使い難そうだなあって思ってましたし」

「ついでに名前も聞いていい?」

「え、あの、はい。・・・阿達潤子といいます」

 アダチ・ジュンコさん?彼がニッコリ笑った。垂れ目を細めて、大きな口元をきゅう~っと上げて。それは色気も可愛げもある表情で、私はハッとする。大きな笑顔だなあと思って、ちょっと羨ましいくらいの明るさがあって。いいなあと思ったのだ。

「漢字は?」

「え?あ、ええと・・・」

 手の平に漢字をなぞって書いてみせると、その笑顔のままで、ありゃ残念って彼は言う。

「獣はなしか。山神では働けねーな。ま、今は人手も足りてるけど」

「はい?」

 呟いた言葉が更に意味が判らずに聞き返すと、ああ、こっちの話しと手をフラフラしていた。それから痛みを堪えてか、顔を歪めて慎重に立ち上がる。

「ジュンコ、さん。3つのRしてみたら?減らす、再使用する、再利用・再生する、だよ。もしまだ過去に捉われてるんならって話しだけどね」

「・・・」

 立ち上がって風に髪を乱され、それに目を細めて話す彼を見上げていた。

 やっぱり大きな人だなあ~、そう簡単に思って、実はあんまりちゃんと聞いてなかったかもしれない。

 彼は最後にまたにっこりと笑うと、じゃあお大事に~、そう言って片手を上げる。

「あ、はい。あなたも・・・」