「いえ、別に男性を避けてるわけでは・・・。でももう男の人は・・・いいかなあ~。元々きっと、恋愛感情も淡白なんだろうって思うし」
手のひらで視線を遮りながらそう言うと、隣に座る彼が突然、ポンと手を打った。
「3つのRって知ってます?」
「は?」
いきなり何?私は衝立にしていた手の平を退けて、目を瞬く。い、いきなり違う話題を振られると頭がついていかないんですけど――――――――
外見がボロボロだけどやはり何となしに全身格好いいその人は、少しばかり悪そうな顔でにやりと笑う。それから組んだ足をぶらぶらさせて話し出した。
「環境ワードっつーのかな。俺は料理人の学校で習ったんだけどね、3つのR。reduce、reuse、recycle」
「し、知りません。ついでに、発音が良すぎて聞き取れません」
正直に答えた。自分としては多少情けなかったけど、仕方ないではないの!だって本当に聞き取れなかった。特に最初。
彼は今度はハッキリと声に出して笑う。あはははって、明るい声が風と一緒に緑を揺らして遠ざかっていく。
「reduce、reuse、recycle。減らす、再使用する、再生する。人生で行き詰ったらそれをしてみろって先輩が言ってた。今思い出したんだけどね。・・・すみません、年上かどうかが判らないけど俺もう限界だからタメ語でいいかな」
混乱したままで、とりあえず私は頷いた。