一人の男性を、最初から独り占め出来ないということ。姉だってまだ若く、自分の子供だって十分望める年齢のはずだ。それを諦めて、彼の子供を家族として受け入れるということ。
彼の娘と馴染むのを待っている間にもどんどん時計の針は進んでいく。その彼を諦めれば、違う独身の男性との恋愛や新婚生活や赤ちゃんを望むことだって出来るのだ。
それを捨てて、既に子供のいる男性の妻になる、それもたっぷりと時間をかけた後で。
失敗したら、それはそれで仕方ないわ、なんて・・・。
・・・私は、きっと出来っこないそんなことを、姉は本当に自分の幸せと思って受け入れられるのだろうか。
だけど姉は真面目な顔のままで頷いたのだ。
「もう長いこと悩んでいて、やっとそこまでを決心したの。・・・幸せは、どのような環境になったって、そこに入ってから探せばいいと思う」
私はその言葉を心の中で繰り返す。今はまだ判らないけれど、だけどその中で探してみせる、それが姉の出した答えなのだろう。
・・・だったら、私に一体何が言えるだろうか。
この強くて凛としている姉が、そう決めたのなら。
私は笑顔を作った。
「反対なんてしないわ。とにかく、おめでとうよね、お姉ちゃん」
そう言うと、照れるわよね~!と自分の額をパーンと叩いていた。
それからまた前のめりになって、ちょっと申し訳なさそうな顔を作る。うん、どうしたの?私が不思議に思って首を傾げると同時に、姉が言った。
「だからね、潤子。悪いけど私達の同居は解消になるの」



