3つのR



 所謂格差婚だったらしい。彼の奥さんの実家は裕福。彼は、母子家庭でそれなりに苦労をした人だった。結婚前から金銭感覚の違いなどはあったようだけど、夫婦になってしまえばその溝も埋められると思ったらしい。ただし、それは子供が生まれるまでだった。

 子供が生まれてからは教育方針の違いまでも金銭感覚の差で出てしまい、夫婦喧嘩が耐えなくなった。

 子供の教育のやり方の言い合いだったはずが、他のことにまで不満を口にするようになる。

 お互いがお互いにイライラして、あら捜しをするような数年間。

 そのうち妻側の親族が夫側を見下した発言を繰り返したのもあって、一緒には居られないと別れを選んだらしい。

 だから当然娘さんは奥さんの方が引き取ったのだ。だけれども、その後すぐに奥さんは不幸な事故にあって死亡、その実家は株価の大暴落の影響を受けて破産にまで追い込まれてしまう。そして傷付いた娘さんは、父親のところへ送られてきた。

 姉は天井を見ながら思い出すような顔で話す。

「その時は知り合い程度だったの。彼は前の会社に出入りしていた業者さんで、私はよく他の同僚達とも飲みに行っていた。ある時、実は彼が離婚経験者で、娘さんを引き取ったってことが判ったの」

 娘を一人で育てることになった彼から相談を受けて、女の子の家庭がどういうものかを話したり、考え方や育児のことを一緒に調べたりしているうちに、恋人になったらしい。

「だけど結婚するとかは、考えてなかったのよ、全然」

 お互いに独身で別に不倫という関係ではないけれど、彼には子供がいて、彼女が父親の恋人を受け入れるにはまだ小さいと姉は思っていたらしい。

 それに、私には妹がいるって。