私が口をあけたままで無言なので、しばらく間を空けてから、姉はもう一度話し出す。

「潤子、驚くだけじゃなくて、私は感想が欲しいのよ。大きな決断だし、今私と住んでいる家族は潤子だけなんだから」

「え?――――――いや・・・だって・・・ええと」

 私は激しく瞬きをして口ごもる。だって、感想?感想なんて本当に思いつかないのだ。あえて口から出るとすれば、これだけ。

 ―――――――本気?お姉ちゃんたら!


 何と、私の姉には今でもしっかりと恋人がいたらしい。

 ただし問題なのは、その相手の立場だった。

 姉がここ5年付き合ってきているその相手は、離婚歴のある、子持ちの男性だったのだ。

 姉がその夜、晩ご飯を用意して私を呼びに来た時、実に簡単に明るい雰囲気のままで言い出したのだ。

 あのねえ、話があるんだけど、って。だから私は今までのように、なあに?と聞いた。いつだって姉がそんな風に話しを切り出すときは、なんてことない、翌日の晩ご飯の事だったり、誰かにあげるプレゼントの内容だったりしたのだから。

 すると姉は言ったのだ。

 潤子、私、母親になろうと思うんだけど、って。

 その時、理解の遅い私の頭の中に浮かんだのは、見事にオール片仮名だった。


 ジュンコ、ワタシ、ハハオヤニナロウトオモウンダケド――――――――――――――