私はハッとして、それから焦ってワタワタと舌を絡ませながら喋る。
「あ、あの――――――元々体が弱かったんですけど、それで結婚生活もうまくいかなくて、それでちょっと自分が嫌になっていて、だけど、あの、もう気持ちも落ち着いたし・・・すみません、こんなことどうでもいいって言うんですよねえ」
もう一度横目で私を見て、彼は前に向き直る。顔を上向きにして風に揺られる緑や飛んでいく雲をみているようだった。
反応がよく判らずに、私もぐっと黙る。・・・ああ、本当に余計なこと言っちゃったなあ~・・・。トホホだった。折角昨日お話した男性とまた会えて話をしていたのに、自分から暗くしてどうするのだ。もう、本当に嫌になっちゃう・・・。
凹む私にも風は優しく吹いて来る。隣の男の人は相変わらず黙ったままだったけど、気まずい沈黙とは思わなかった。だから私も徐々に肩の力を抜いた。
「・・・俺は経験ないから、なんともだけどさ」
隣から声が聞こえて、私は背筋を伸ばす。恐る恐る横を見ると、彼は前を向いたままで平然とした顔で話していた。
「結婚すら考えたことねーし・・・だから、まあ、そんな経験はねーんだけど、でもとにかく、大丈夫だと思いますよ」
「え?何が?」



