丁寧に話すことが、とても慣れないらしい。その言いにくそうな感じに私はまた笑う。思ったより怖くない、この人。そう思って安心もしていた。
「大丈夫ですよ。重い病気とかではないんです。ただ昔から体が弱くて、疲れるとよく高熱を出すもので」
「あ、そうなんですね。高熱って38度とか?」
彼の返しにまた笑ってしまった。普通の人ならそうかもね、そう思って。
「40度はいきますね」
「うわ、それはしんどいかも」
大人で40度なんて出るのか、そう呟くのに大いに心の中で頷いた。私もそう思いたいですよ、って。私とくればもう慣れてしまって、38度くらいでは感じないほどだ。一気に40度まで駆け上がるのでそんな体温を見ることはないのだけれど。
「そうそう、だから点滴です。とにかく熱が下がるので」
「ああ、なるほど」
うんうんと頷いている。余りにもペースよく喋っていて、だから私はついぽろっと零してしまったのだ。
「でもこれでもマシになったんですよ、離婚した時よりは」
って。
彼が一瞬で真顔になってチラリと私を見たのが判った。



