「すんご~~~い、便利」

 姉がそう言って、ほお、と満足のため息を零した。

 季節は夏で、カーテンをしめて窓を開けた状態で、窓際で麦茶を飲んでいた。今晩は風があって涼しく、二人とも苦手なクーラーをつけずに済んで助かっている。

「何が?」
 
 私はうちわを使って風を顔に送りながら聞く。判ってるのだけれど、聞いて欲しそうだったのだ、姉が。チラチラとこっちを見ているんだもの。

 予想通りに姉が質問に食いついた。

 椅子の上で私の方へ体を向けて、うきうきと話し出す。

「右田君よう、あったりまえでしょ~!!男が一人家にいるって、本当便利。高いところ手が届くしさ、重いものも持ってくれるしさ、物の簡単な故障ならすぐ直してくれるし、それに彼は、ご飯まで作れる!」

 興奮してそう言った後、それに~!と叫ぶ。

「目の保養まで出来るじゃないの!神様ありがとう!」

 私は呆れたため息を零した。一応、言っておこうかな、一応ね。

「お姉ちゃん、龍さんをこき使ったらダメよ。彼はあくまでも赤の他人なんですよ、お客様、おーきゃーくーさーま、なんだから」

「判ってるっつーのよ。でも実際便利でしょうが!」

 憤然とそう言いながら姉が開き直るから、私は苦笑する。