「もう時間がないわね。・・・あの、私にもやっと恋人が出来たんです」

 高田君が頷いた。私はもう一気に話すことに決めて、身を乗り出して話す。

「仕事も始めて、まだまだだけど一応自立って形は取れてるし、その・・・まだ体は弱くって笑っちゃうくらいだけど外にも出ているし、病院のお世話にはなってないし、それにこの間男性にお付き合いを申し込まれて――――――――――」

 そこまで喋ってから、私はいきなり照れる。やはり自分のことをこれだけ話すのは照れくさかった。しかも、目の前にはやたらと綺麗な男性。ちょっと不思議な感覚だ。

 コホン、と空咳を一度してから、私は続きを話した。

「・・・うんと言ったの。だから、私にも彼氏がいるの。そのことに自分でもビックリしてる」

 私の最後の言葉が面白かったらしい。高田君がゆっくりと笑う。

「あいつも安心するよ、それを聞いたら」

 またぐっと気持ちがこみ上げて、泣きそうになった。だけど、私は何とか耐えて顔を上げて微笑んでみせる。目の前に立つ高田君の向こう側に、元夫の姿が見えた気がした。

 笑う、幻が。

 明るくて、お喋りで、いつもふざけていて、好奇心に溢れた仕事人間のあの人。

 また笑っているならば―――――――――――――

 
 私はそれで、とても満足だ。